イスラム組織ハマスとイスラエルの軍事衝突が始まり、10月7日で1年が経ちます。パレスチナ自治区ガザで4万1千人超の犠牲が出るなか、イスラエルはレバノンでイスラム教シーア派組織ヒズボラへの攻撃を激化。中東では地域紛争の恐れも出てきています。終わりが見えない戦いの背景には何があるのか。錦田愛子・慶応義塾大学教授(中東政治)と、早稲田大学特命教授で日本文学研究者のロバート キャンベルさんが対談しました。前編では、ガザの現状や米国とイスラエルの関係性について考えます。
- 【特集】ガザ戦闘から1年 現地通信員が見た戦場
――ガザで戦闘が始まり、1年が経ちます。
錦田 まさか1年後に、これほど激しい戦闘が続いているとは想像していませんでした。
1年前、同じ中東の研究者と話をしていたとき、「ひょっとしたら今回は死者が1万人を超えるかもしれない」と言われて驚きました。いまや4万人以上の方が亡くなっている事実に、がくぜんとしています。
キャンベル 命の重みがどんどん軽くなっていくように感じますね。
錦田 戦闘が始まった初期、イスラエル側はハマスのことを「血塗られた動物」と言っていました。人とすら見ていないのだと感じてショックでした。
キャンベル ガザには鉄道がありません。国際空港も破壊されていて、移動が著しく制限されています。
ウクライナとの違い
記事後半ではお二人の対談の様子が動画でご覧になれます。
錦田 ロシアに侵攻されたウ…